電気自動車が速いわけ
この前、宙に浮く卵で電気自動車が速いのは当たり前だ、と書いた。
その理由を書くことにしよう。
まずは、図を見てほしい。(クリックで開きます)
2004年度の大学講義、自動車工学で使った図です。
エネルギー密度と言うのは、単位質量あたりに蓄えることのできるエネルギーで、この値が大きいほど、同じ重さでたくさんのエネルギーが蓄えられる。
エネルギーと言うのは仕事のことで、毎月届けられる電気の使用量と同じである。[J:ジュール]とか[Wh:ワット時]とか[Cal:カロリー]などの単位を用いる。1Jと言うのは、1[N:ニュートン]の力で1[m]移動するときのエネルギーである。つまり、力×距離、と言う単位を持っている。
エネルギー密度は、自動車で言えば、同じ重さの燃料でどれくらいの距離が走れるか、の指標になる。
パワー密度と言うのは、単位質量あたり発生することのできるパワーで、この値が大きいほど、同じ重さでたくさんのパワーを発生できる。
パワーと言うのは力率とも言う。エネルギーを時間で割ったものである。いうなれば瞬発力。一度に放出できるエネルギーのことである。単位は[kW:キロワット]、[PS:馬力]などを使う。1Wと言うのは、毎秒1[J]の仕事をする、と言う意味である。つまり、力×速度、と言う単位を持っている。
パワー密度は、自動車で言えば、同じ重さの燃料でどれくらいの加速度が出せるか、の指標である。
つまり、こう言うことだ。
エネルギー源である、ガソリンとバッテリーを比較する。
そうすると、表からわかるように、Li+(リチウムイオン二次電池=充電池)のパワー密度は、ガソリンと同じで、1000[W/kg]である。同じ質量で同じパワーを発揮できる。
ガソリンエンジンと電気モーターの違いはあるが、同じ機械部品なので、バッテリーとガソリンほどの違いはないだろう。むしろ、電気モーターの方がガソリンエンジンよりも効率がいいので、軽いのではないか?つまり電気自動車が速く走るのは当然なのである。
電気自動車の問題点は速さではない。
表からわかるように、エネルギー密度である。つまり、航続距離が問題だ。ガソリンエンジン車と同じ航続距離にするためには、多くのバッテリーを積む必要がある。ガソリンエンジンと電気モーターの効率の違いからざっと計算して、1.5倍くらいの質量のバッテリーが必要だろう。
燃料の方が、二次電池(充電池)よりも多くのエネルギーを蓄えられるので、燃料から直接電気を得る、燃料電池とか、エンジンを発電機にして使うハイブリッド車というものがさかんに開発を進められているわけだ。
つまり、電気自動車の問題点は「遅い」ことではなくて、「長い距離が走れない」ことなのである。そして、それはバッテリーと言う基本的な要素にかかっている。
将来的には、電気自動車が主流になると思うが、二次電池の問題が片付かない限りまだ先のことである。私は2020年以降と読んでいる。当面はハイブリッド車、その後、コストの問題が片付けば燃料電池車ということになるだろう。
投稿者 suzuki : 2005年07月15日 08:49
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