宙に浮く卵
「ゆで卵を毎秒30回転させると重力に反して宙に浮く」−慶應義塾大学の下村裕教授らが予測した現象を神戸大学海事科学部西岡俊久教授らのグループがシミュレーションと実験で実証した。(詳しくは神戸大学のサイトへ。)
この発表を知って思い出した言葉がある。
「この受賞を契機にして、産業に役立つといったものではない、見返りのない基礎研究が、もっと推し進められたらと思う」
ノーベル物理学賞の小柴昌俊博士、受賞時のコメントである。
科学とは、「知ること」である。卵を回転させたら宙に浮く、と言ったような、不思議な現象を解明することが科学である。
われわれの事をホモ・サピエンス(Homo Sapiens = 知識を持ったヒト)と言う。このサピエンス(Sapiens)も、サイエンス(Science)と同じ意味で、「知ること」である。
今日、特に日本では、科学=サイエンスと言うと、自然科学を指すことが多いが、これは本来の意味ではない。
万学の祖、アリストテレスの昔から、自然科学(Physike = Physic) は、科学のうちの、理論学(Theoretike = Theories) の更に一分野に過ぎない。
※物理学を指すPhysicsは自然科学(Physic)の学問(ics)と言う意味である。おおむね17世紀ごろにできた言葉で、このころからScienceは自然科学を指して用いられるようになった。
人類は、常に新しい「知識」を求め続けてきた。
そして、想像力によって、それを応用した「道具」を作った。これが人類を進化させた。
大学が、「産業に役立つといったものではない、見返りのない基礎研究」、つまり、純粋な「知識」を追い求めることをやめたら、10年後の日本はどうなってしまうのだろう?
現実に、世界最速の電気自動車なんてバカなものをやっているような大学さえある。電気自動車が速いのは当たり前なのである。(長くなるのでこれはまたいずれ別な機会に)
そこから、なんら新しい「知識」は得られない。
これは、産業界にも問題がある。大学に即戦力を求めすぎるのだ。
日本がメカトロニクス技術で世界を圧倒したのは、大学の地道な基礎研究と、企業の想像力の賜物だった。
商品の開発サイクルがどんどん短くなり、それだけ、企業がモノを考えなくなった、と言うことか。
モノを考えない人間にモノづくりはできないと思うのだが。
投稿者 suzuki : 2005年07月13日 00:56
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