« 新しいお知らせはありません | メイン | トヨタが最大規模リコール? »

2009年06月06日

足利事件はなぜ起きたのか?

足利事件の捜査指揮 元県警幹部ブログが炎上
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/it/internet/262729/
一部抜粋。
元幹部は昨年、菅家さんの再審請求が棄却された際、「最善の捜査を尽くしたもので、誤りでないことを再確認していただいた」などとブログで感想を述べ、これに対し批判コメントが集まっていた。現在、ブログは削除されている。

のだそうです。
僕は、この事件は、新しい技術を応用する場合に配慮すべきことを怠ったために起きたと思っています。
はっきり言えば、当時の、科捜研及びそれに関わった技術者の過失である。

さて、当時として最善と言うのがどのくらいのレベルだったのか、検証してみましょう。当時のDNA鑑定の精度がどのくらいだったかと言うと、およそ800人に一人の割合で、別人を同一を判別するくらいだったそうです。
これを持って、1/800=0.125%の精度だなーと単純に思った人は同じ過ちを起こすかもしれません。

800人に一人と言う割合を当時の足利市の人口で計算してみます。
足利市のホームページ
http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/01_kakuka-page/01_soumu/01_kikaku/toukei/kikaku_toukeijinkou04.htm
と、政府の国勢調査ホームページ
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001007702&cycode=0
の統計データを用います。

足利市のHPによれば、平成2年の国勢調査で、足利市の就労人口(15歳〜64歳)の男性人口は58,304
人です。
これだと少し幅が広いので、当時の群馬県のより詳しい国勢調査の結果から25歳〜49歳の男性人口を単純に比率で推定すると、30,923人。

800人に一人の割合で別人を同一と判定する、と言うことは、足利市の25歳から49歳の男性だけでも30,923/800=約38人が同一と判断されたことになります。
群馬県全体だと449人、隣接する栃木、埼玉、群馬三県では2,784人、東京都をあわせると実に5,407人のDNAが一致したことになります。

誤差0.125%と言うのは、見方を変えるとそう言うことです。

今現在、DNA鑑定は、4兆人以上に一人の精度だそうですから、地球上で一人を判別する精度があります。(世界人口は約50億人)。
今の精度で鑑定した結果はもちろん正しい。
しかし、当時のお粗末な技術を、このような重大な事件に応用することなど到底無理だったのです。

同じような間違いは、様々な分野で起きています。
%であらわされた数字のマジックにご注意を。


投稿者 suzuki : 2009年06月06日 09:26

▲このページ [ 足利事件はなぜ起きたのか? ] の先頭へ
◀前のページに戻る

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメント

はじめまして、鈴木さん。

足利事件の菅家さんの再審が決定されました。鈴木さんもご指摘の、DNA判定結果の活用方法のずさんさは信じられないですが、社会的に大きな注目を浴びた凶悪な殺人事件でさえこんな非常識なことが起こるのですから、一般人が信じきっているはずの警察や検察で日常茶飯事のように信じられないことが起こっており、私はその実態が一般にはほとんど知られていないことこそ大問題だと感じています。

交通事故でいえば2006年3月に高知県で起きた白バイとスクールバスの衝突などは鈴木さんがおっしゃる科学技術以前に警察や検察が、被告を有罪にするための行動に執着していることが明白で、バス乗客などによる、バス運転手の無罪を主張する証言などにはまったく耳を貸さず、論理の通らない無茶苦茶な推論を展開するのに必死になっているように思えます。

実際、私の周辺でもあきれるような警察や検察の行動を目の当たりにしたことがあります。冤罪に陥れられた方の無念さや不幸を考えれば、冤罪に陥れた警察、検察、裁判所が社会的制裁も受けずにのうのうと暮らしていけることがこのような実態を生んだ原因のひとつに挙げられると思います。例えば、有罪判決に加担した証言者や工学鑑定人などは、その後、新しい証言や映像が出てきて冤罪を証明された暁には、簡単に名誉毀損や偽証罪で元被告に訴えられて、損害賠償請求されることがありますが、警察官や検察官、裁判官には簡単にはそのような追及の手が及びません。足利事件においても警察、検察、裁判所ともに立証の意識が驚くほど薄く、安易な憶測で出してしまった結論に固執するという最悪の行動パターンが明るみに出て、いま一斉に非難されています。鈴木さんはブログによれば京都地方裁判所専門委員という肩書きをお持ちのようですが、この実態をどのように見ておられるのでしょうか。日々起こる、ニュースにもならないような小さな交通事故にこそ警察や検察の、雑で、簡単に処理してしまおうという捜査が山ほどあると感じてなりません。

投稿者 有田 薫 : 2009年06月24日 00:52


コメントしてください

記入された内容はそのまま公開されます。公開を希望されない項目は記入しないで下さい。




保存しますか?