トヨタが最大規模リコール?
事態は深刻。アメリカのPL裁判、なめてはいけません。東芝が1999年に起こされたFDDの欠陥訴訟(注1:)を見ればわかるとおり。
トヨタ米販売380万台リコール
(毎日新聞 - 10月06日 11:30)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091006-00000038-mai-bus_all
トヨタ自動車は5日、運転席に敷かれたフロアマットが運転中に外れてアクセルペダルの操作を妨害した問題で、米国で販売した7車種、計380万台のリコール(無償の回収・修理)を米道路交通安全局(NHTSA)に届け出た。
■米トヨタ、レクサスのリコール見合わせ
(読売新聞 - 10月06日 11:13)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091006-00000359-yom-int
米トヨタ自動車販売(本社・カリフォルニア州)は5日、当面、連邦自動車安全法に基づくリコール(回収、無償修理)ではなく、顧客にフロアマットを外すよう求める「安全キャンペーン」を続けることを決め、米道路交通安全局(NHTSA)に文書で報告した。
その文書(10月5日付け)の内容(抜粋)↓
Toyota understands that NHTSA will assign a recall number to this campaign, as if it were a campaign conducted under the Safety Act, and will post the information about the campaign on the NHTSA/ODI website. Toyota also requests that the summary of the campaign on the NHTSA/ODI website contain a notation that Toyota has not made a decision that these vehicles contain a safety-related defect.
まあ要するに、『NHTSAはリコール案件として調査しているが、トヨタは原因を特定できていないからリコールにはしない。しかし危ないのでNHTSAのウェブサイトには載せてほしい。但し、安全上の不具合は見つかっていないとも書いて欲しい。』ぐらいの事が書かれています。
これに対するNHTSAの10月6日付け公式文書(抜粋)↓
Summary:
TOYOTA IS RECALLING CERTAIN MODEL YEAR 2004-2010 PASSENGER VEHICLES. THE ACCELERATOR PEDAL CAN GET STUCK IN THE WIDE OPEN POSITION DUE TO ITS BEING TRAPPED BY AN UNSECURED OR INCOMPATIBLE DRIVER'S FLOOR MAT.
『トヨタは、互換性の無いもしくは正しく取り付けられていないフロアマットに、アクセルペダルが全開状態で引っかかる恐れがあるとして一部車種の2004-2010モデルについてリコールした。』
調べたら、この件は2007年からアクセルペダルが戻らない不具合及びそれに関する事故が報告されていて、NHTSAはリコール案件として調査しています。死亡事故まで起きています。
トヨタとしては絶対認めたくないのでしょうが、たぶん認めることになるでしょう。内容的に。過去のNHTSAのレポートを見ると彼らの固い意志を感じます。アメリカの役人、仕事に誇りを持っていますからね。
しかも、リコールするかどうかはもうすでに関係ありません。ここまで問題になったら、該当車種で事故った奴はみんなトヨタを訴えます。弁護士が焚きつけて集団訴訟が起きます。またそれらの訴訟にことごとく負けます。アメリカですから。そう言うわけで、『Toyota has not made a decision that these vehicles contain a safety-related defect.(トヨタはこれらの車種で安全上の欠陥を認めたわけではない)』とわざわざ書いたわけでしょうけれど。それがどのくらいの意味を持つのか。アメリカのPL裁判、酷いですからね。メーカーには。国家予算級の損害賠償を請求されます。
いくらトヨタが『欠陥は見つかっていない』と頑張っても、欠陥の定義が違いますから。(注2:)
とまあ、これは最悪のシナリオの場合ですが。
リスク管理とは本来そう言うものです。
(注1:)1999年3月に、東芝製ノートPCに搭載しているFDC(Floppy-Disk Controller)のファームウエアに不具合があり、書き込みエラーによりデータを破壊する可能性があるとして、損害賠償などを求める訴訟が起こされた。最終的に東芝側が和解金として総額1,100億円を支払うことで和解した。
あくまで可能性の問題で、このことによって実際にデータが破壊されるわけではなく、被害の報告があったわけでもない、と東芝は主張している。
(注2:)アメリカのPL裁判で参照される欠陥(defect)の定義は、ISO9000sと同じ。つまり、要求事項(requirement)を満たさないこと、と明確に定義されます。そして、要求事項とは、『明示された、一般に認められている黙示の(generally implied)、または義務として負わされているニーズ(need)または期待(expectation)をいう。ただし、"generally implied"とは、当該組織、その顧客およびその利害関係者にとって、考慮中のニーズまたは期待が明示されていないことが、習慣上または普通であることを意味する。』とこれまた明確に定義されています。
投稿者 suzuki : 2009年10月07日 09:30
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