« これはお勧めしません。 | メイン | コピーライティングの原点 »

2006年04月28日

また、データ捏造?

ちょっと過剰反応のような気がしますね。
この記事です。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060427-00000207-kyodo-soci

----引用ここから
神戸大教授がデータ捏造 鉄切削工具の特許で
 神戸大工学部の大前伸夫教授(59)が、ダイヤモンドを使い鉄を高精度で切削できる工具の発明で2004年に特許を出願した際、捏造(ねつぞう)した実験データを記載した書類を特許庁に提出していたことが27日、分かった。
 27日夕、記者会見した薄井洋基工学部長は「未実施の実験データを文書に記載したことは誠に遺憾」と述べた。大学側は「捏造と言われても仕方ない」と話している。
 大前教授は大学の判断に従い24日、特許出願を取り下げた。神戸大は調査を終え次第、教授の処分などを検討する。
 神戸大によると、大前教授は04年4月、神戸大助教授ら2人と連名で、電子ビームをダイヤモンドに照射して表面の性質を変えることによって、高精度で鉄を切削できる工具の製造方法を発明したとする特許を出願。
(共同通信) - 4月27日
----ここまで

特許のしくみがよくわかっていないのではないでしょうか?
そう言う人、意外と多いんです。

特許を出願する上で、実験データなど必要ありません。
特許に必要なのは、「新規性」と「有用性」だけです。
つまり、新しい技術を応用して、役に立つ発案をすれば、特許出願はできるのです。

私の書いた特許も、いくつかは「実験データ」と称してグラフを載せていますが、実際はスケールも入っていないようないいかげんなものです。
捏造以下です
多くは仮説だけで「効果あり」と書いています。いくつかはシミュレーションの結果を、これもスケールもみんな消したグラフにして載せています。

要は、「役に立つ」ことが証明できればいいわけで、詳細な実験データは必要ないですし、「こうなるはず」と言う仮説が、理論に基づいて証明できていればいいのです。

なぜ、詳細なデータを載せないかと言うと、理由があります。
「ライバルにタダで教えてやる必要はない」からです。

ライバルの技術は、多くは特許から盗みます。
特許そのものの権利は保護されていても、実施例からある程度何をやっているのか、わかります。
実は、こちらの方がよほどためになるノウハウだったりするのです。
詳しく書けば書くほど、タダで持っていってくれ、と言っているようなものです。
実施例は「できるだけわかりにくく」かつ単純に書くものです。
詳しい実験データなど、そもそも載せるべきではありません。

これが、特許のしくみなんですね。
学術論文との違いでもあります。

2006.7.13追記
大学の特許は、企業のものと違って、技術移転することが目的だから、しっかりと確認してから出願すべきだ、と言う意見もあるようです。

もちろん、そのような考え方があることも知っています。

でも、よく考えてください。
特許に、企業用、技術移転用などという区別が必要でしょうか?

特許権を含む、知的財産権とは、本来、排他的独占権 なのです。
他人が、その権利を侵害できない、と言うただひとつの目的しかありません。
ライバル企業が困っていることを特許にする。
そして、どんな構成であれば、その特許を侵害するのかについて、誰が読んでも納得するように書く。
これが売れる特許です。

自慢するわけではありませんが、私の特許は、日産だけではなく、ベンツ、BMW、マツダ、富士重工業、三菱自動車、スズキなど、国内外の主だった自動車メーカーに売れています。
当然、最先端のかっこいい発明ではありません

なぜ、みんな買っていくのでしょうか?
最初から流通を目的にしなかったからです。

「ライバルが同じ技術を使えなくする。」
と言う点に集中したからです。

そのためには、発明の効果について詳しく書く必要はありません。
特許の内容はわかりにくくても、どんな構成であれば、この特許を侵害するのか、小学校5年生にもわかるように書く。これがコツです。
その発明によって、どんな効果があるのか、なんて二の次です。
効果があるから売れると言うものでもありません。

特許が売れるかどうかは、同じことで困っている企業がどのくらいいるのか、によるのです。
これは、その技術に携わっていればわかります。
自分が困っていることはライバルも困っているはずですから。
その、困っていることをライバルよりも先に解決して、出願すればいいだけのことです。

解消できる方法が数少なくて、困っている企業が多ければ、その特許は売れます。
どんなにかっこいい、唯一の技術でも、だれも困っていない技術は売れません

これは、一般の商品でも同じです。
世の中の、ほとんどすべての商品は、消費者の不便を解消するためにあります。
あることに困っている人がどのくらいいるのか?
それを解消できる商品はどのくらいあるのか?
この2つだけで、ヒットするかどうかは決まります。

世の中は単純なのです。
いい特許というのは、ライバル企業が困っていることを、先に解決する。そして、何をやったら、その発明に抵触するのか、科学音痴の弁護士や裁判官が読んでもわかるように書く。
これだけです。
その特許によってどんな効果があるのか、なんてどうでもいいのです。

投稿者 suzuki : 2006年04月28日 08:22

▲このページ [ また、データ捏造? ] の先頭へ
◀前のページに戻る

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメント

コメントしてください

記入された内容はそのまま公開されます。公開を希望されない項目は記入しないで下さい。




保存しますか?